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横浜地方裁判所 昭和63年(ワ)1238号 判決

主文

一、被告は、原告に対し、別紙物件目録一記載の土地につきなされた横浜地方法務局大和出張所昭和六一年九月二〇日受付第四八六四四号所有権移転登記について否認の登記手続をせよ。

二、被告は、原告に対し、別紙物件目録二記載の建物を収去して同目録一記載の土地を明け渡せ。

三、訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第一、請求

主文同旨

第二、事案の概要

本件は、赤谷喬士(以下「破産者」という。)の破産管財人である原告が、別紙物件目録一記載の土地(以下「本件土地」という。)の登記名義人である被告に対し、右土地はもと破産者の所有に係るものであったところ、被告の本件土地取得につき、主位的には破産法七二条一号又は二号の否認原因が、予備的には同法七二条一号又は二号及び八三条一項一号の否認原因があるとして否認権を行使し、これによって回復された所有権に基づき、本件土地について否認の登記手続を求めるとともに、本件土地上に存する被告所有の別紙物件目録二記載の建物(以下「本件建物」という。)の収去及び本件土地の明渡しを求めた事案である。

一、争いのない事実等

1. 破産者は、昭和六一年一一月二八日午前一〇時、当裁判所において破産宣告を受け、原告がその破産管財人に選任された。なお、破産者は、有限会社あかたに(以下「破産会社」という。)の代表者であったが、右破産会社も破産者と同時に破産宣告を受け、原告がその管財人に選任された。

2. 本件土地は、もと破産者が所有していたところ、破産会社は、昭和六〇年一〇月二三日、建築請負業者である補助参加人に対し、本件土地上にビジネスホテル(本件建物)を建築する工事を、

イ  請負代金 一億六八一七万三〇〇〇円

ロ  右代金の支払方法 右建物完成時に一括して支払う

ハ  特約 材料は補助参加人が供給するとの約定で発注した(甲三、証人田川)。

3. 被告は、昭和六一年九月一九日、本件土地を、破産者又は補助参加人から(後記争点1)、当時ほとんど完成していた本件建物とともに代金合計二億八〇〇〇万円で買い受け、その所有権移転登記を経由した。

4. 原告は、被告に対し、昭和六三年七月七日の本件第一回口頭弁論期日において、破産法七二条一号又は二号に基づき破産者と被告との間の売買契約を、同年一〇月六日の本件第三回口頭弁論期日において、予備的に同法七二条一号又は二号及び八三条一項一号に基づき破産者と補助参加人との間の売買契約をそれぞれ否認する旨の意思表示をした(当裁判所に顕著な事実)。

5. 被告は、本件建物を所有して本件土地を占有している。

二、争点

1. 被告の本件土地の取得経過

原告は、被告が破産者の代理人である補助参加人から昭和六一年九月一九日に本件土地を買い受けたものであり(主位的請求原因)、破産者の直接の相手方に当たると主張する。これに対し、被告は、本件土地は同月上旬に既に補助参加人が破産者から買い受けていたもので、被告は同月一九日補助参加人から本件土地を買い受けたから、破産者との関係では転得者に該当すると主張するので、原告は、予備的に被告主張の売買の経過を援用する(予備的請求原因)。

2. 破産者と被告との間の本件土地売買契約が認められる場合、右売買契約について破産法七二条一号又は二号の要件が存するか。同条一号の要件が存する場合、被告がいわゆる善意であったか。

3. 破産者と補助参加人との間及び補助参加人と被告との間に順次本件土地売買契約が認められる場合、破産者と補助参加人との間の本件土地売買契約について破産法七二条一号又は二号の要件が存し、かつ、右各否認原因について被告が悪意であったか。

第三、争点に対する判断

一、争点1(被告の本件土地の取得経過)について

1. 証拠(甲一、三ないし六、七の1、2、八、一一の1、一二の1、一五、一六、証人田川、同赤谷)によれば、以下の事実が認められる。

(一)  破産者は、大和市内の朝日生命大和営業所ビル一階の店舗を賃借して、主として婦人服の小売販売を業とする破産会社を経営していたが、昭和五九年頃から経営不振に陥り、同年末頃には高利の金融業者から運転資金の融資を受けるようになり、また、本件土地を担保に横浜銀行大和支店から借入れていた事業資金約四〇〇〇万円についても元利の返済を先送りするような状況となっていた。

(二)  このため、破産者は、本件土地上にビジネスホテルを建築してホテル業へ業種を転換したうえで右債務を逐次返済していくことを計画し、昭和六〇年一月頃、知人から紹介された請負業者である補助参加人との間で右建築計画の協議に入った。当初の計画では、破産会社が株式会社日本国土企画の仲介で金融機関から二億五〇〇〇万円の融資を受け、これを右建築費に充てる予定であったが、着工までに右融資を受けられる見込みがなくなったため、本件建物の完成までの間は補助参加人が全額右建築費を負担して工事を進め、完成後に破産会社が日本国土企画の口添えで本件土地建物を担保に銀行から融資を受けて補助参加人に支払うことにした。そこで、補助参加人は、同年一〇月二三日に破産会社との間で本件建物の建築請負契約を締結するに当たり、将来破産会社が銀行から確実に融資を受けることができるようにするため、工事請負契約書(甲三)とは別に「金銭消費貸借契約書」と題する書面(甲四)を作成し、破産者が本件土地を正規銀行関係以外の街金融等に担保として差し入れたり、抵当権を設定したりすることを禁止するとともに、破産者が右禁止事項に違反した場合には補助参加人が独断で本件土地を第三者に売却できる旨の特約を付した。

(三)  ところが、破産者は、右特約に反して、破産会社の借入金の返済のために、本件土地について、昭和六〇年一二月二七日に日本ジョイントベンチャー株式会社に対し極度額五〇〇〇万円の根抵当権を、翌六一年一月一四日には富山君雄に対し極度額一〇〇〇万円の根抵当権を各設定して、それぞれ新規の借り入れをした。このことを知った補助参加人は、同年四月一四日に破産会社から「四月末日までに破産会社が右新規借り入れ分を返済して街金融の根抵当権を抹消する。」旨の契約書(甲五)を取り付けたが、これも履行されなかった。そこで、補助参加人は、同年七月一五日に破産者及び破産会社から誓約書(甲六)の交付を受けて「破産会社は同社が賃借している店舗を売却して、横浜銀行以外の抵当権を抹消する。」旨確約させたが、この契約も結局履行されなかった。

(四)  このため、補助参加人は、本件土地を建築中の本件建物とともに売却してその代金から本件建物の請負代金債権等を回収することとし、昭和六一年八月七日、破産者に対し、「本件土地を第三者に売却することを承諾し、売却に伴う登記名義変更に必要な書類に対する署名捺印は補助参加人の要求どおり行う。」旨の誓約書(甲七の1)に署名押印させた上、破産者の印鑑証明書と白紙委任状とともに交付させる一方、破産者が一五日以内に本件土地の買主を捜してくるならばその買主に売却してもよい旨を申し述べ、その旨の書面を取り交わした(甲七の2)。

破産者は、右約定に従い、大和市内の不動産業者を通じて本件土地の買い手を捜したものの、右一五日の期間内には買主を見つけることができず、同年九月一〇日に補助参加人の見つけた買主である被告に対し本件土地を売却する旨の補助参加人が用意した「売買契約書並びに承諾書」と題する書面(甲八)に署名押印した。

破産者は、右書面において、破産者所有の本件土地を、補助参加人の立替工事による本件建物と一緒に被告に、総額二億八〇〇〇万円で売却するとともに、本件土地の代金は右総額から補助参加人の立替金を控除した残額とすることを了解した。

右(一)ないし(四)認定の事実に、後記2認定の本件土地建物売買契約書(甲九、乙一)作成の経緯を勘案すると、補助参加人が破産者の代理人として被告に対し、昭和六一年九月一九日、本件土地を本件建物と一緒に代金二億八〇〇〇万円で売り渡したことが認められる。

2. 以上と異なり、被告及び補助参加人は、昭和六一年九月上旬に補助参加人が破産者から本件土地建物を代金合計二億八〇〇〇万円で買い受け、次いで被告は補助参加人から同年九月一九日に本件土地建物を代金合計二億八〇〇〇万円で買い受けた旨主張し、右主張に沿う証拠としては同年九月一九日付の被告と補助参加人との間の売買契約書(甲九、乙一)並びに証人田川守男及び被告代表者の供述がある

しかしながら、被告としては本件土地建物を購入するに当たり、破産者の一般債権者から何らかの法的責任を追及されることを懸念して、これをできる限り回避するため、昭和六一年九月一九日、本件土地建物売買契約書(甲九、乙一)を作成して形式上自己に対する売主を補助参加人にしたにすぎないこと(甲八、証人田川、被告代表者)、右売買契約書には破産者が立会人として署名押印していること(甲九、乙一)、補助参加人が破産者から本件土地建物を購入した際の売買価格は補助参加人が被告に右物件を転売した際のそれと全く同一の二億八〇〇〇万円であり、破産者の一般債権者による追及を避けるということ以外には、補助参加人が一旦破産者から本件土地建物を買い受けるべき合理的理由は何ら見出せないこと、本件建物は補助参加人が材料を供給して建築したものであり、請負代金が全然支払われていない九月上旬の段階ではその所有権は補助参加人に帰属していたものである(甲二三)から、補助参加人が本件建物を破産者から買い受けたとすること自体不自然であること、本件土地についての補助参加人を権利者とする昭和六一年九月九日受付の所有権移転請求権仮登記は、補助参加人の所有権を保全するためではなく、本件土地を、補助参加人の関与しない第三者に取得されることを防止するためになされたものであること(証人赤谷)、補助参加人代理人は、原告からの照会に対し、補助参加人は破産者から本件土地売却に関する一切の権限についての委任を受けて本件土地を被告に売却したものであり、その際被告の要請により補助参加人が売主になったにすぎないものである旨回答していること(甲二三)、以上の各事実に照らし、前掲甲第九号証(乙一)及び証人田川の供述等はたやすく信用することができず、他に右1認定の本件土地の取得経過を覆すに足りる証拠はない。

二、争点2(本件土地売買に関する否認原因の存否)について

1. 本件土地売買契約の詐害性

(一)  証拠(甲一、一一の1ないし3、一二の1ないし3、一三の1ないし10、証人田川、同赤谷)によれば、破産者は本件土地を被告に売却した昭和六一年九月当時本件土地の他に見るべき資産を有していなかったこと、当時破産会社の経営は大幅な債務超過の状態で危機に瀕しており、債権者が店舗に取り立てのために頻繁に出入りしていた上、帳簿も全く付けられなくなっていたこと、破産会社は同年九月一八日に一回目の小切手不渡りを出した後、岡本秀雄弁護士に依頼して同月二二日付けで各債権者に対し債権調査に対する協力方を要請する通知書(甲一四)を送付していわゆる任意整理手続を進めようとしていたが、同月二四日には二回目の小切手不渡りを出して銀行取引停止処分を受けたこと、破産会社は破産者が妻ほか一名の従業員を使用して経営していた個人企業同様の会社であり、破産者は破産会社の事業資金の調達のために親戚、知人のほか、高利の金融業者やクレジット会社から借入れをし、また破産会社が右借入れをする時には自ら保証人となっており、このため破産会社の経営悪化にともなって破産者の債務も増大し、昭和六一年九月一八日の時点では破産者は合計約一億六五〇〇万円余りもの債務(補助参加人に対する債務を除く。)を負担していたことが認められる。

右のように債務者が危機的状況に陥っている場合、唯一の資産である不動産を売却して、費消・隠匿しやすい金銭に変えることは、特段の事情がない限り、原則的に破産債権者に対する詐害行為に該当するというべきである。

(二)  しかるに、被告は、右特段の事情として、本件土地の売却は相当価格でなされたものであり、かつ、その代金の相当部分が本件土地に担保権を有する債権者への弁済に充てられたから詐害行為に該当しない旨主張するので、この点について判断する。

(1) 証拠(甲一、三、四、八ないし一〇、二三、証人田川、同赤谷、被告代表者)によれば、昭和六一年九月一九日当時、本件土地に設定されていた抵当権の債権額及び根抵当権の極度額の合計は一億三九六〇万円であったこと、右担保権者らはその被担保債権につきいずれも右同日に本件土地建物の売買代金の中から弁済を受けて翌二〇日に根抵当権設定登記等を抹消していること、補助参加人が右の当時破産者及び破産会社に対して有していた債権は、本件建物の建築・設計代金債権合計一億四二三七万円余りのほか、請負代金債権以外の債権(破産者の債務を補助参加人が立替払いしたことによる債権、破産者に対する補助参加人の貸金債権、請負代金の立替利息、コンサルタント料等)合計三一四四万円余りであって、右債権の合計額は一億七三八一万円余りであったこと、補助参加人の専務取締役として本件建物の建築に関して破産者との交渉を担当した田川は、本件土地建物の売却価格について、補助参加人の債権額が一億六〇〇〇万ないし七〇〇〇万円であるとの前提の下に「二億八〇〇〇万円で売れれば債権等がみんな消えると考えていた。余計なものをとるつもりはなかった。」旨供述していること、田川は破産者に本件土地建物を被告に二億八〇〇〇万円で売却する話を伝えた際、その金額ならば貸金をすべて控除して四〇〇万円位残る旨話しており、本件土地の売却代金は、登記を有する担保権者の被担保債権の弁済に八三二三万円余り、補助参加人への弁済に一億八二二八万円余り、販売手数料等として一〇四〇万円が費消され、破産者の分として現在補助参加人が預かっている残金は四〇八万円余りであること、破産者は昭和六一年八月七日から九月一〇日までの間に本件土地の買主を捜している際、不動産業者から本件土地を坪当たり七〇〇万円、総額三億五〇〇〇万円で売却できると言われたことがあり、右金額で売却することを希望していたが、田川は本件土地建物の早期売却の方針の下にこれを二億八〇〇〇万円で売却することを強引に決めてしまったことが認められる。

以上の事実によれば、被告に対する本件土地建物の売買代金額二億八〇〇〇万円は、本件土地に設定されていた抵当権設定登記等を抹消するために必要な金額と、補助参加人が破産会社及び破産者に対する自己の債権全額を回収するために必要な金額を基礎に算出されたものにすぎないことが推認できる。

そして、本件土地は相鉄線と小田急線の大和駅から約一五〇メートルという交通至便な位置にあり、都市計画上商業地域に属し、建ぺい率八〇パーセント、容積率は四〇〇パーセントと高度利用の可能な立地条件にあること(乙四)、昭和六一年度の地価公示において、本件土地の近隣にある大和市大和東一丁目一〇七二番外の土地の価格は一平方メートル当たり一一七万円であること(公知の事実)、前記認定のとおり、本件土地売買契約当時、本件土地を三億五〇〇〇万円で売却できると言っていた不動産業者もいたこと、本件建物は一部内装工事等に未完成な部分もあったものの、工事完了検査は済んでいて保存登記ができる状態であった(証人田川)のだから、新築のホテルとしてほどなく営業用に使用することが可能であったことに照らせば、二億八〇〇〇万円という本件土地建物の売却価格が客観的に相当な価格の範囲内にあるとは到底認められない。

被告は本件土地上に未完成の本件建物があったことを根拠に本件土地の相当な売買価格は低く評価されるべきであると主張するが、本件建物は保存登記ができる状態にまで達している上、本件土地と同時に被告に対し売却されたのであるから、右のような主張が根拠を欠くことは言うまでもない。また、乙第四号証には、本件土地の価格を一億三五九五万円、本件建物の価格を四三三九万七〇〇〇円と査定する旨の記載が存するけれども、右査定は、王子信用金庫が被告への融資額を決定するためになされたものであるから、低めに評価がされていることが推認できる上、王子信用金庫の融資枠の決定は昭和六一年九月一九日以前になされているのに(被告代表者)、同号証の作成日付は同年一二月九日付になっていること、同号証の路線価格の記入欄が空白とされていること等に鑑みると、客観的に正確な評価がなされているか疑問であり、更に、前記認定事実にも照らしてみるならば、右査定は到底採用できない。

従って、本件土地の売却が相当な価格でなされたことを前提とする被告の主張は理由がない。

(2) 被告は、本件土地の売却代金が担保権者らへの弁済に充てられたことを根拠に、本件土地の売却は競売による安価な換価を避けるためになされたものであり、破産者の債務の弁済等に資するものであるから詐害性を欠く旨主張する。しかしながら、本件土地の売買価格に相当性がないから右主張はその前提を欠く上、その売買代金も、売却の妨げになる抵当権設定登記等を抹消するために必要な限度で担保権者の被担保債権の弁済に用いられた他はほとんどが補助参加人への優先的な弁済に充てられているところ、前記認定に照らせば、補助参加人は正当に取得できる本件建物部分の対価相当額を大幅に越えて本来一般債権者の引当となるべき本件土地の対価部分からも多額の優先弁済を受けたものと認められるから、この点に関する被告の主張も理由がない。

(3) 以上の事実によれば、本件土地の売却は破産債権者を害するものであると認められる。

2. 破産者の詐害意思

証拠(甲一一、一二の各1ないし3、証人赤谷)によれば、破産者は、自ら依頼した不動産業者の仲介により本件土地を総額三億五〇〇〇万円で売却すれば、自己の全債務を清算することができると考えていたにもかかわらず、田川が早急に本件土地建物を併せて二億八〇〇〇万円で売却することを強く要求した際、そのような金額では抵当権設定登記等を有している債権者以外の一般債権者に対して弁済ができなくなることを認識しながら、当時破産会社の経営が極端に悪化するとともに債権者の取り立てが激化していたことから半ば自棄になっていたため、右金額で売却することに同意したことが認められる。してみると、破産者は本件土地売買契約当時、右売買が破産債権者を害することを認識していたことが明らかである。

3. 被告(受益者)の善意

被告は、本件土地売買の詐害性についての認識がなかった旨主張し、証人田川及び被告代表者はこれに沿った供述をしている。

しかしながら、前記認定のとおり、本件土地の売買価格が時価に比して低廉であったばかりでなく、被告は、破産者の一般債権者との紛議を懸念し、本件土地の売買に当たっては、補助参加人が売主となる形式の売買契約書(甲九、乙一)の作成を要求したものである。また、証拠(甲九、乙一、被告代表者、弁論の全趣旨)によれば、被告は、本件土地建物を買い受けるに先立ち、田川から、本件土地建物を売却する理由について、破産者の資金繰りが苦しくなったので破産者はホテル経営を断念し、破産者の債務整理と補助参加人の請負代金債権の回収のために売却するものである旨の説明を受けていること、昭和六一年九月一九日付売買契約書には「破産者若しくはその債権者等との間に紛争を生じた場合補助参加人が責任をもって解決する。」旨の特約及び「破産者及びその債権者との紛争により本契約が取り消され、又は無効とされたときには、補助参加人は被告に対し受領した金員を返還するほか、手附金の四倍相当額の違約金を支払わなければならない。」旨の特約が付されているところ、右特約が設けられたのは、被告の本件訴訟代理人の進言によるものであることが認められる。右認定の各事実に照らせば、証人田川及び被告代表者の右供述はたやすく措信することができず、他に被告の右主張を認めるに足りる的確な証拠はない。

4. 以上の事実によれば、破産者の被告に対する本件土地の売却については、破産法七二条一号の否認原因があるものと認められる。

物件目録〈略〉

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